Home / 青春 / 【牌神話】〜麻雀少女激闘戦記〜 / 第1部 一章【財前姉妹】その11 第十三話 ラストピース左田

Share

第1部 一章【財前姉妹】その11 第十三話 ラストピース左田

Author: 彼方
last update Last Updated: 2025-07-07 10:00:00

151.

第十三話 ラストピース左田

 少しの準備時間の後、Bグループの撮影が始まる。

「ミサト、飯田さんも、来てくれたんだね! ありがとう」

「みてたよ、あの降りはすごかったね! 八萬くらい切っちゃうと思った。ピッタリ当たり牌なんだもん驚いたなぁ」

「私から放銃されても見逃しかけてツモりにいくだろうから決着にはならないし、あのノータイムの自信満々な様子からして任せちゃって良さげだからねー」

 すると猿山たちも話しかけてきた。

「よう、決勝進出か。さすがだな」

「俺たちのこと覚えているかな」

「猿山プロと富士山プロ! 今日は誰かの応援ですか? あ、私?! もしかして私の応援とか? かわいいもんね、私って」

「暇だから富士山について来ただけだ。そもそもこの日は仕事は入れられない。予定では勝ち抜いていて自分が卓に入っている日だったわけだしな。ていうか、キミの応援なわけないだろ」と猿山が言う。

「にひひ! 冗談よ!」

「私は応援で来た。次のBグループにいる前回優勝者の左田(ひだりた)プロは私の師だからな」そう言って富士山プロが親指をくいっとした先には50代半ばといった印象の、それでいてピシッとした姿勢で歩く女性がいた。その人こそ左田純子。現雀聖位の女流プロであった。

(この『左田純子(ひだりたじゅんこ)』こそがカオリたち麻雀部や麻雀教室に必要なラストピースとなるのだが、この時はまだ知る由もない)

────

「マナミが来ないな……」

 すると、少ししてマナミが慌てて登場した。

「お待たせしました!」

 時間ギリギリだが遅刻してはいない。

「もー、マナミ。どうしたかと思った!」

「喫茶店でマンガ読んでたら夢中になっちゃってて…&hel

Continue to read this book for free
Scan code to download App
Locked Chapter

Latest chapter

  • 【牌神話】〜麻雀少女激闘戦記〜   第1部 一章【財前姉妹】その12 第一話 雀聖位 左田純子

    152.ここまでのあらすじ 喫茶店『グリーン』のオーナーの助けもあり、ユウたちは着々と麻雀教室オープンへの準備に取り掛かっていた。 一方、カオリたちプロ組も全員しっかり昇級を決めていて絶好調。 そして、一般参加可能なタイトル戦『雀聖位戦』に参加した少女たち。その決勝に準決勝Aグループからはまたしても佐藤優が駒を進めた。 準決勝Bグループには財前真実がいる。ユウが先に待っている決勝卓へとマナミは駒を進められるのか── 【登場人物紹介】財前香織ざいぜんかおり通称カオリ主人公。女子大生プロ雀士。所属リーグはC2。女流リーグA。読書家で書くのも好き。クールな雰囲気とは裏腹に内面は熱く燃える。柔軟な思考を持ち不思議なことにも動じない器の大きな少女。神の力を宿す。日本プロ麻雀師団順位戦C3リーグ繰り上げ1位財前真実ざいぜんまなみ通称マナミ主人公の義理の姉。麻雀部部長。攻撃主体の麻雀をする感覚派。ラーメンが大好き。妹と一緒に女子大生プロ雀士となる。神に見守られている。C2リーグ所属。女流リーグA。第36期新人王戦3位決めゼリフは「私がナンバーワンよ!!」佐藤優さとうゆう通称ユウ兄の影響で麻雀にハマったお兄ちゃんっ子。誘導するような罠作りに長けている。麻雀教室の講師になることが夢。第1回UUCコーヒー杯優勝竹田杏奈たけだあんな通称アンテーブルゲーム研究部に所属している香織の学校の後輩。佐藤優の相棒で、一緒に麻雀教室をやることを夢見ている。

  • 【牌神話】〜麻雀少女激闘戦記〜   第1部 一章【財前姉妹】その11 第十三話 ラストピース左田

    151.第十三話 ラストピース左田 少しの準備時間の後、Bグループの撮影が始まる。「ミサト、飯田さんも、来てくれたんだね! ありがとう」「みてたよ、あの降りはすごかったね! 八萬くらい切っちゃうと思った。ピッタリ当たり牌なんだもん驚いたなぁ」「私から放銃されても見逃しかけてツモりにいくだろうから決着にはならないし、あのノータイムの自信満々な様子からして任せちゃって良さげだからねー」 すると猿山たちも話しかけてきた。「よう、決勝進出か。さすがだな」「俺たちのこと覚えているかな」「猿山プロと富士山プロ! 今日は誰かの応援ですか? あ、私?! もしかして私の応援とか? かわいいもんね、私って」「暇だから富士山について来ただけだ。そもそもこの日は仕事は入れられない。予定では勝ち抜いていて自分が卓に入っている日だったわけだしな。ていうか、キミの応援なわけないだろ」と猿山が言う。「にひひ! 冗談よ!」「私は応援で来た。次のBグループにいる前回優勝者の左田(ひだりた)プロは私の師だからな」そう言って富士山プロが親指をくいっとした先には50代半ばといった印象の、それでいてピシッとした姿勢で歩く女性がいた。その人こそ左田純子。現雀聖位の女流プロであった。(この『左田純子(ひだりたじゅんこ)』こそがカオリたち麻雀部や麻雀教室に必要なラストピースとなるのだが、この時はまだ知る由もない)────「マナミが来ないな……」 すると、少ししてマナミが慌てて登場した。「お待たせしました!」 時間ギリギリだが遅刻してはいない。「もー、マナミ。どうしたかと思った!」「喫茶店でマンガ読んでたら夢中になっちゃってて…&hel

  • 【牌神話】〜麻雀少女激闘戦記〜   第1部 一章【財前姉妹】その11 第十二話 味方の邪魔をしない

    150.第十二話 味方の邪魔をしない ミサトはバイトを休んで雀聖位戦の準決勝を観に行った。元々、勝ち抜いたら出勤出来ないのでこの日のシフトは入れていなかったのだ。飯田ユキも誘って2人で準決勝を観戦しに行く。「雀聖位戦って言うのは大きなタイトルだよね? それの準決勝に麻雀部から2人残るってすごくない?!」「マナミもユウも本当に強いからね。自慢の友達よ」「なんだか私も鼻が高いな」「もっと鼻が高くなるように今日は2人が決勝進出できるよう応援しましょ!」「そうだね!」────「ここが銀座かー」「試合はもうとっくに始まってるわね」「帰りにでいいから画廊とか見て回りたい。ねえ、いいでしょミサト」「はいはい、帰りにね」 到着すると既にユウの卓が一回戦のオーラスだった。(ちなみにマナミの卓はまだ開始していない。準決勝からは映像対局なので対局を順番に行い、解説者などもちゃんといる) ユウはトップ目であった。この準決勝は同じメンツで2回行い上位2名が決勝進出という仕組みだ。「リーチ!」 するとラス目からノータイムで力強いリーチがかかった。二着目の親との点差は16700なのでリー棒が出ると親マンツモでトップを捲られる。 ちなみにその時のユウの手はこう。ユウ手牌三伍⑨⑨⑨22567中中中 八ツモ ドラ2 実はユウもテンパイしている。ここにラス目からリーチがこようがラス目には跳満放銃してもトップであり迂回する必要はない。なので八萬ツモ切りでテンパイキープ。あるいは親が追いつく前にラス目に和了ってほしいため差し込んでもいい。そう思うのが普通だった。しかし…&hellip

  • 【牌神話】〜麻雀少女激闘戦記〜   第1部 一章【財前姉妹】その11 第十一話 麻雀教室プレオープン

    149.第十一話 麻雀教室プレオープン ユウたちは麻雀教室をプレオープン的に始めることにした。 まだ、アンやショウコは高校を卒業していないしユウも大学生なので頻繁に時間を割くことは出来ないが、準備だけは整っていたので都合のいい日に試験的にやってみたのだ。 しかし、最初は全然だめ、来客ゼロ。(まあ、そんなもんだ)と、諦めかけた。その時……!「あのー。麻雀教室っていまやってますか?」「はい! 営業中です、いらっしゃいませ!」 そこに来たのはサラリーマン風の男性だった。「うちの上司が麻雀好きで…… 接待麻雀を出来るくらいの腕になりたいのですが、お願いできますか?」「なるほど、接待麻雀ということは読んで差し込む技術を学びたいということですね。お任せください。私がお客様を差し込みのプロにして差し上げます」 記念すべき1人目のお客様は27歳サラリーマンの岬芳一(みさきよしかず)「私が…… って。キミが講師なのかい?」「ええ、不服でしたか?」「いや、そう言う訳じゃないけど…… ずいぶん若い人なんだなぁって」「ふふ、これでも私、第1回UUCコーヒー杯って言うちょっと大きめの麻雀大会で優勝してるんですよ。言わばタイトルホルダーです」「タイトルホルダー!? す、すごいな…… それは失礼しました。よろしくお願いします」「はい、こちらこそ。よろしくです」 麻雀教室は実際に来店するお客様以外にもパソコンに依頼人から牌譜データを送ってもらって添削をするという仕事も稼働し始めていて、少しずつ活動を開始していた。

  • 【牌神話】〜麻雀少女激闘戦記〜   第1部 一章【財前姉妹】その11 第十話 完璧な配置

    148.第十話 完璧な配置 女流リーグ最終節を終えたその日の夜。マナミが機嫌良く入浴している間、3人(人?)は話していた。《いやー、おめでとうございます。カオリはやっぱり強いですねー。それにしてもマナミさんの逆転優勝は驚きました! 同テンなのに直撃取るなんて普通ありえないですから。劇的勝利でしたね!》〈強くなりましたよねマナミも。正直、私はもうマナミに必要ないのかも知れません。実はもう何日も前から私はマナミに指示を出していませんから〉(ラーシャもマナミに話しかけてみたらいいのに)〈彼女はそれを望んでいませんので……〉 《案外、仲良くなれるかもしれませんよ》(そうそう、私たちみたいにね)バン 風呂場の扉を開閉した音が聞こえる。マナミが風呂をあがったようだ。(あ、マナミがあがったから私もお風呂の準備するね。womanたちはまだお話ししてたら?)〈いや、私の声はマナミに届いてしまうので〉(あれ? そう言えば私はふたりのどちらの声も聞こえるけど)《カオリはセンサーが高性能な神探知機みたいなものです。普通、こちらが話しかけても届かないのが人間と神の関係ですから。まして、自分に憑いている神以外と会話する人間なんてカオリだけですよ》(へえ…… 私のおばあちゃんは巫女だったし覚醒遺伝的な神力があるのかな?)《おばあちゃんが巫女……》(?) するとマナミが部屋に帰ってきた。「カオリー。お風呂あいたよー。入るでしょー?」「うん。入る」 暑かった季節は終わりを告げ、今日はもう肌寒くて湯船がとって

  • 【牌神話】〜麻雀少女激闘戦記〜   第1部 一章【財前姉妹】その11 第九話 クライマックスの奇跡

    147.第九話 クライマックスの奇跡 女流リーグ第3節はメグミはコケていたが財前姉妹やミサトやヤヨイはガンガンポイントを叩いていた。 女流リーグは人数が少ないため次回第4節が最終節となる全16半荘制だ。メグミは今回コケたのは痛かった。とは言え、第1節第2節で貯めたポイントがあるので昇級はしそうではある。しそうではあるが、首位昇級が狙えたのでそこは残念だった。いや、まだ諦めるには早すぎるが。 ちなみにAへの昇級は5人だけ。丁度この5人が昇級で決まりのような、そんな予感がしていた。 そして、第3節も終了して運命の最終節。  最終節はマナミとヤヨイとメグミが同卓で首位昇級を賭けた戦いになっていた。メグミだってここで大きく叩けば首位昇級がまだある。少しはそう考えたが。前に出れば出ただけリスクもある。ここで無理しては昇級ラインから落ちる可能性もあるのでメグミは戦闘を避けることを選択。Bリーグ優勝よりもメグミが求めているのはAリーグ参戦という権利であった。そこに師である杜若茜(かきつばたあかね)が待っている。だから行かなければならない。そう思っているのだ。 その考えはカオリもそうで、カオリはマナミたちと別卓だが(5位までに入ればいい)という考えで最終節は守り主体の麻雀をやり抜いた。ミサトに関してはいつも通りだ。守り主体が通常運転であるので今日もそうした。 カオリとミサトはそつなく最終節を終わらせてマナミたちの卓を見に行く。すると丁度オーラスになった所だった。 ここでカオリたちはクライマックスの奇跡を目撃することになる。  オーラスの親はメグミで、メグミはノーテンで伏せれば昇級なので連荘はない最終局。 接戦なのはヤヨイとマナミの2名。この2人の勝った方がBリーグ優勝になる。そんな場面だった。オーラスの並びは

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status